ASDの症状を知っている人は、「サリーとアンの問題」を知っている人が多いと思います。この問題は、他者の心の中を推測できるかのテストです。状況が変わっていくとき、その状況を知らない相手がどう考えるかがわかるかを子供向けのテストにしています。大人になるとサリーとアン程度の問題はわかるようになる人が多いそうです。ところが、この状況が変わっていく部分が複雑だったら、登場人物が増えたら、どうなるか? 発達障害以外でも複雑すぎて、「定型発達でも判断できないよ」なんて問題はがおおいです。仕事でも、職場でも、友人でも、子供の学校の関係者、ママ友、PTA、入っているサークルや、活動団体などで、たくさん起きます。いろいろな人がいるグループ構成の団体は、どんな場所でもあるからです。
登場人物が、増えたら、サリーとアン程度の問題がさらに、違う要素も含まれて、複合的な判断が必要な場面は、仕事じゃなくても、たくさん出てきます。それらが、どの程度判断できるかは、発達障害でも、定型発達でも、個人差が出ます。
サリーとアンの問題は、判断用に、大人のレベル問題があったら、いいのかもしれないと感じました。現実は、サリーとアンと、ほかの人もいれば、それぞれの事情が重なり、優先順位を付けて判断しなければいけないことだらけです。接客業なら、お客様がいて、会社の人がいて、上司がいて、違う部署の人がいて、会社の基準があり、その中で、どう動けばいいのか、マニュアルがある場合と、臨機応変にいかなければいけないことだらけで、「指示してもらえばいい」だけでは済まない状況がたくさんあり、それを判断できないのに、「私の判断は正しい」と言ってしまう、アスペルガー症候群の人も多いそうです。ここにADHDやLDなども重なると、お手上げです。「一体、どの症状で、そんな判断になるの?」という状況で、お医者さんに解説してもらうしかしょうがないぐらいの状態です。
サリーとアンの時の間違った判断だらけのASDの人は、自分の症状を知ろうとしない人もいます。ASDの「当事者」だと、間違った判断だらけになりますから、確認しても確認してもきりがありません。ASDの人の判断を採用しない。という選択肢しか方法がないのですが、ASDには「言い張る」のも特徴にあり、周りは大変です。
発達障害は目に見えない障害のため、初対面では、ほぼ、わかりません。会話をちょっとした程度では、相手の力量もわからないし、判断がおかしいと気づけるぐらいまでの距離間で、一緒に作業をするようになって、初めて気づきます。
例えば、サリーとアンの問題の大人バージョンが、「サリーとアンが大人になっていて、仕事先が同じで、同僚にトーマスもいて、上司にビルもいました。サリーが書類ケースに封筒を入れました。のちに、サリーがいないときに書類ケースから、その封筒をアンが取り出して、自分の引き出しに入れました。トーマスがそれを見て通りかかり、封筒は上司に届けるべきだと勝手に判断して、アンが行ってしまった後に、封筒を持っていき、上司のビルの机の上において置く。『それぞれが、封筒は、どこにあると言うでしょうか? それぞれは、後で会った時に、封筒を持って行ったことを口頭で伝えればいいと思っています』」なんて問題になったら、大人のアスペルガーの人は、どう判断するのでしょうか? 答えは、サリー、アン、トーマスは、自分が置いた場所だと思い込んでいる。なぜなら、お互いに、確認を取る前だから。ビルだけは、「なんだ、この封筒は?」と思っている。という状態ですが、サリーとアンの問題が解けないASDは、「全員、『ビルの机の上』と言うに決まっている」と言ってしまうかもしれません。あるいは、「なんだ、この問題は。持っていくときにメモを置いておくのが常識だ」というASDの人もいるし、「問題の出し方が間違っている」と問題にケチをつけるASDもいるようです。こういうことが日常で、いつも、起こりがちなのが、ASDの特徴なので、大変になります。
大人になると、トラブルになっても、なんとなく、「どうすればいいのかがわかる」というのも多いし、「複雑すぎて、自分では結論が出ない」というのもあります。ところが、ASDの人で自覚がないままだと、「これが正しい答えだ!!」と間違った判断を言い張って、判断の正否がすぐにわからない場合も多く、混乱してしまいます。
重症じゃないASDの人だと、「自分には判断はできない」と気づけるようになる人もいるそうです。「判断はできないけれど、判断はしてはいけないと気づける」という状態の人だと、お仕事の現場も混乱しにくいそうです。でも、現実は、重症の人ほど、「俺だったら判断できる」と言い張ってしまうし、間違った判断を自分がしていることに気づけないそうです。優秀なお医者さんに診察してもらえる順番や、一般企業就職の障害者枠は、重症な人が優先されているようです。でも、グレーゾーンや、症状が軽い人のほうを優先したほうが、一般の会社は、混乱する数が減るだろうし、定型発達の人も助かるのでは? という意見もあるようです。重症の人の場合は、作業所のほうを改善して、専任のお医者さんが時々診断するシステムがあり、カウンセラーに時々、お話を聞いてもらえる状態にして、常にジョブコーチをつけて、その人たちが働きやすい場所を作って、賃金もある程度保証されて、というバックアップ体制を敷かないと難しいという意見も多いようです。
まだまだ、発達障害の状態にあった社会にはなっていないため、現場の人たちが困っています。